PDCAとOODAって何?
現代のビジネスは流動的です。デジタルの利活用が広まったことにより、ビジネスモデルの破壊が容易に発生するようになっています。そしてコロナウイルスの感染拡大は流動性に拍車を掛けています。
流動性の高い状況でも柔軟に対応できるのが「OODAループ」です。OODAは「PDCAサイクル」とは性質が異なる考えであり、両者をうまく組み合わせると効率よく業務を遂行できます。
今回はOODAループについて知りたい方向けに、その概要やPDCAサイクルとの違い、そして活用方法などをご紹介していきます。
1.OODAループって?
OODAループとは、その場の状況を判断して即時に対応を行うためのフレームワーク(思考の枠組み)です。冷静にその場の状況を観察して将来を予測して、適切な行動を実行していくのがポイントになっています。
OODAループの基礎を作ったのは米軍に所属していたジョン・ボイド氏です。ジョン・ボイド氏は自らの経験を基に、現場が素早く状況を判断して実行するためのフレームワークとしてOODAループを編み出しました。
ビジネスも流動的になっているという点では戦場と同じ特性を持っています。OODAループは現代に即したフレームワークであり、現在さまざまな企業が戦略方針に取り入れています。
2.OODAループ具体的な4つのフロー
OODAループは、次の4つのフローで成り立っています。
1.Observe(観察)
内部や外部の状況を冷静に把握していくフローです。
人間は思考に先入観や主観などが入ってしまいがちですが、観察のフローでは何が起こっているかを状況がよかろうと悪かろうとそのまま把握していきます。後のフローにつなげられるようになるべく細かく情報を収集していきましょう。
- たとえば「1km先に行きつけのレストランがあるが、2km先には新しくできた評判のよいレストランがある。今は1人でいるので自由に行きたいお店を決められる。ただし2時間以内に自宅に帰宅しないといけない。徒歩移動だ。」といった普段の生活で発生する思考も観察フローに該当します。
2.Orient(方向付け)
収集した情報を使えるように整理していくのが方向づけのフローです。観察フローで入手した情報に、自分の経験や歴史といった各情報を併せて分析を行うのがポイントです。最終的にできあがった仮説が、今後の行動に大きな影響を与えていきます。
- 先ほどの例を基にすると「2時間しか時間がないから遠くに行くには速足で行かないといけない。どちらのお店に行ってもよいがゆっくり食べる時間が欲しい」といった感じになります。
3.Decide(決断)
方向付けの段階ではいくつか実行したい内容の候補が出てくるはずです。実際にどの行動を選択して実行するのかを決めるのが決断のフローになります。複数ある行動の候補に優先順位を付けていくのが決断フローのポイントです。
1.自分や組織が最終的にどうなりたいのかを確認する
2.行動の選択肢を整理する
3.最終的な希望と選択肢を照らし合わせて、最も効果が出るものを選定する
といった順番で行動の内容を決定してみてください。
- 上記の例で言うと「2時間を有効に使って、ゆっくりご飯を食べたい。1km先の行きつけのお店に行けば勝手も分かっているし、食べる時間を十分に確保できる。2km先のお店は今度にして1km先のレストランへ行ってみよう」という風になります。
4.Act(行動)
決断ができたら次は行動フローに移行します。行動でどんな結果が得られたのかをフィードバックするのがポイントです。
OODAはスピード感が重要になります。一度の行動が成功しても失敗しても、どこに課題があるのかを把握した上で次の作戦立案に活かせるようにする必要があります。何度もOODAループを回せるようにすることで状況が改善され、よりよい結果が得られるようになるので覚えておきましょう。
3.PDCAとは別物?その違いは?
OODAループと比較されるフレームワークにPDCAサイクルがあります。OODAループとPDCAサイクルは計画を基に行動を実行してフィードバックを行い、改善を都度行っていくという点ではいっしょです。しかしスピード感などで違いもあるのでチェックしてみてください。
OODAは軍事分野で発生した思考、PDCAは生産部門で発生した思考
OODAは軍事分野で発生した思考です。流動的な状況でその場に応じて対応するのが特徴です。対してPDCAサイクルは、生産部門で発生したフレームワークです。
生産性を高めるために
・Plan(生産の計画を立てる)
・Do(計画を実行する)
・Check(計画が成功しているか検証する)
・Action(課題を洗い出して改善策を考える)
といったプロセスを通して目的を達成していきます。環境が変化することは特に想定されていません。
OODAは柔軟性が高いが、PDCAは柔軟性が低め
OODAループは性質上、流動性の高い状況でも適切な判断がその場で下せる強みがあります。自社にとって悪い状況が発生しても状況を分析して被害を食い止めることも可能です。
しかしPDCAサイクルの場合、環境が変化する状況を想定していません。トラブルが発生した場合、計画に縛られて上手く方向転換などができない危険性もあります。PDCAサイクルだけを導入して施策を進めるのはベストではありません。
会社としてはPDCAサイクルを回しつつも、状況によってOODAループも回しながら状況に柔軟に対応していける体制を構築していくことが必要です。
OODAは成果重視、PDCAは手順重視
OODAループでは得られる成果を重視します。手順についてはその場の状況で自由に変更されます。夢といった形になっていないものを実現する際にも使われるのは自由度が高いからです。
対してPDCAサイクルの場合、業務プロセスの可視化及び改善に重点が当たっています。目的を達成するにはプロセスの1つ1つを可視化して計画と照合し、かけ離れている点がないか調べるのが重要です。業務生産性を向上させる際はPDCAサイクルがよく使われます。
4.OODAループはどのように活用する?
ここからはOODAループを活用するポイントを解説していきます。
社内で経験や情報などを共有する
OODAループを成功させるには、経験や情報が誰かに集中して属人化してしまう状況を避ける必要があります。
・営業の成功・失敗事例をミーティングで発表する
・研修でプロジェクト実行に必要な基本スキルを訓練する
・デジタルツールを使いながらリアルタイムで情報が共有される環境を作る
といった方法で社内の従業員全体に経験や情報などが共有されて活用できるように準備しておきましょう。
柔軟な権限移譲を行う
OODAループでは現場が判断を下せるように環境を構築していく必要があります。経営陣や管理職が権限をすべて持つのではなく、必要に応じて従業員に権限を移譲して自由に動けるように工夫できるかがポイントです。
判断の基準などは経営陣や管理職が従業員とコミュニケーションを通じてレクチャーしていきましょう。何度もチャレンジして結果を出せるようにサポートしていくことも重要です。
PDCAサイクルを組み合わせる
OODAループにも弱点があります。制約や前提条件などがある環境で作業効率化を図るにはPDCAサイクルのほうが向いています。
そこで
・制約や前提条件などの見直しをOODAループで行う
・OODAループで決まった環境を基にPDCAサイクルを回す
とすることで、OODAループをさらに効果的に回せるようになるのがポイントです。
想定外の事態が発生してもOODAループを基に素早く方向性を転換できるようになれば、PDCAサイクルにもずれがなくなり効率的に運用できるようになります。両フレームワークの性質が違うからこそ、併用するとより大きな効果を生み出せます。
5.まとめ
今回はOODAループの概要やPDCAとの違い、そして活用する際のポイントなどを解説してきました。
OODAループは軍人が開発したフレームワークであり、柔軟に状況へ対応して最善の策を実行するのに適しています。その場の状況を情報収集して方向性を考え、行動の内容を決めて実行するという流れは流動性が高い現代では活用できる範囲が広いです。
ただしOODAループが昔から使われているPDCAサイクルより優れているわけではありません。両者の特性を上手く組み合わせながら施策を実行していき、現場でも施策の立案や実行などができる環境を構築していきましょう。